分子設計ソフトウェアSYBYLには、3次元スケッチ機能や分子構造最適化機能、2次元構造として入力された分子構造を3次元に立ち上げるオプションソフトウェア(Concord)などが用意され、分子の立体構造を簡単に入力し立ち上げることができるようになっています。しかし、多数の回転可能結合や柔軟な置換基を持つ分子を取り扱う場合には、それらを考慮しながら分子構造を構築しなくてはなりません。この回転可能結合についての考慮が不足すると、入力した分子の形状に歪みが残ったりエネルギーの高いコンフォメーションになってしまいます。このような場合、コンフォメーションサーチ機能を用いてエネルギー的に安定なコンフォメーションを探すことが必要です。
SYBYLでは、Advanced Computationモジュールでこの『コンフォメーションサーチ』の機能を提供しています。
Advanced Computationには、以下のコンフォメーションサーチ機能が含まれています。
Systematic Searchは、ユーザが指定した回転可能結合を順次 一定角度づつ回転させてコンフォメーションを発生させるコンフォメーションサーチ手法です。この場合、分子中の各原子が重なり合わない全てのコンフォメーションを発生させることができますので、その中のエネルギーの小さなコンフォメーションについて集中的に解析することで実際に分子が取り得るコンフォメーションを重点的に考慮する事が可能になります。
Systematic Searchでは、指定した全ての回転可能結合を回転させてコンフォメーションを発生させます。このため、分子によっては膨大な数のコンフォメーションが発生しますが、SYBYLのSystematic Searchでは、コンフォメーション発生の前段階で『不可能な』コンフォメーションを除くようアルゴリズムが工夫されおり、高速にコンフォーマ発生を行うことができるようになっています。
また、次のような計算補助機能もあります。
Constraints
計算を行う場合に、任意の2原子間についての距離がある特定の距離になるように制限を加えることができます。Coordinate Map
コンフォメーション計算時に、指定した原子ペアの座標を保存することができます。Distance Map
計算中に、指定した2原子間の距離を記録することができます。この記録結果を他のコンフォメーションサーチに適用して、距離の制限条件として使用することができます。
SYBYLでのコンフォメーション結果の解析では、Molecular Spreadsheet(MSS)を使用します。Systematic Searchの結果を格納したMSSを用いると、指定した2原子間の距離を計算する、指定した結合の結合角や2面角を計算する、それらを用いてデータのフィルタリングを行う、などの処理を行うことができます。また、MSSの持つグラフ機能を用いて結果を解析し、発生したコンフォメーションを絞り込む作業を効率的に進めることができます。
Grid Searchは、Systematic Searchの『指定した結合を一定角度回転させてコンフォメーションを発生させる』機能に、『発生した各コンフォメーションに最適化計算を行う』という手続きを組み合わせ、自動化したものです。この機能を用いると、コンフォメーションとして発生した各構造を元に最適化計算を行うことができます。(サーチ対象として指定した結合の2面角はそのとき設定された角度に固定されます。)特に、回転可能角を2つまたは3つ程度指定して、その部分の結合が回転した場合の影響を細かく調べる場合に威力を発揮します。
計算終了時には回転角と最適化を行った際のエネルギー値の入ったMolecular Spreadsheet(MSS)が自動的に開きます。Grid Searchの結果は、このMSSを使用して解析することができます。
Systematic SearchやGrid Searchは、しらみつぶし的にコンフォメーションを発生させて処理を行います。このような手法では、分子のコンフォメーションをもらさず発生できるため、エネルギー最小のコンフォメーションを探すような場合には特に威力を発揮します。しかし、回転可能な結合が多い分子に対してこれらの手法を適用すると、莫大な数のコンフォメーションができ、実用時間内での計算が行えない、結果の解析が困難になるなどの問題が生じます。そこで、多数の回転可能結合を持つような分子のコンフォメーション解析の場合には、『サンプリング』的な発想に基づく計算手法を使うのが効果的です。このような目的で作られたコンフォメーション解析手法がRandom Searchです。

GA Conformational Searchは、分子のエネルギー最小構造を見出すための計算手法として遺伝的アルゴリズム(GA)を利用するものです。GAは、生物の遺伝と進化の過程をモデルにして構築された計算手法で、複雑な関数の極値探索問題で威力を発揮する計算方法といわれています。コンフォメーションサーチも一種の関数値最小化問題と考えることができます。
SYBYLに実装されたGA Conformational Searchの場合、回転可能な結合が5つ以上あるような分子の最適化に特に威力を発揮します。この手法では、回転可能結合の角度を指定した角度刻みで設定して、コンフォメーションを発生させます。角度刻みやGAパラメータは任意に変更可能です。システマティックサーチ同様、高速にコンフォメーションサーチを行うことができます。

