近年、技術の進歩により疾病の標的となる生体高分子(タンパク質・酵素)と生理活性を示すリガンド分子の複合体構造が実験により同定され、公共データベースである PDBにて多数公開されています。また、低分子化合物を収載したデータもWebや各ベンダーより手軽に入手可能となっています。最近の創薬研究では、これらのデータを利用して、標的となる生体高分子に結合する低分子化合物をコンピュータ上で予測する“バーチャルスクリーニング”が注目を集めています。
Dockingパッケージは、バーチャルスクリーニングを実施するために最適なSYBYLモジュールを中心としたパッケージです。

 Dockingは生体高分子の編集、低分子化合物の3D化、ドッキング計算とスコア評価、構造最適化とモデル閲覧などのモジュールを組み合わせたパッケージで用途に合わせた3タイプを用意しています。(パッケージ概要参照)

研究タイプに合わせた使用法

 Dockingは研究対象としている生体高分子の立体構造が既知であり、(1) 生体高分子と結合する新規低分子化合物の探索を行いたい、(2) 既に得られている活性化合物の結合様式を推定したい、(3) 推定した化合物の結合様式や結合部位から合理的な化合物のデザインを考えている、などの要望に応える最適なシステムを提供します。また、Expertパッケージを利用すると、研究対象としている生体高分子の立体構造が未知の場合でも、ホモロジーモデリング手法により、標的構造の予測が可能です。さらに、その構造を利用してバーチャルスクリーニングを行なうことができます。

解析の流れとモジュール

1. ドッキング計算の準備
 ドッキング計算を行なう前に、生体高分子の編集や低分子化合物の3D化といった前準備を行います。

SYBYL/Base、Biopolymer、MOLCAD (生体高分子構造の準備)

PDBの立体構造ではほとんどの場合、次の修正が必要です。

  • 動きの大きいループ領域/末端残基で多く見られる欠落残基の予測・付加
  • 原子衝突の緩和
  • 水素原子の付加
  • 生体内を考慮した荷電状態への変換(酸性・塩基性残基/末端残基) など

 SYBYLモジュールは、これらを自動識別して、簡単な操作で修正できます。また、修正後の構造の妥当性を立体化学的に評価できます。  活性部位が未知の場合は、自動で活性部位候補を探索できますので、活性部位が未知の系においてもバーチャルスクリーニングが可能です。活性部位の大きさ・形状やアミノ酸の特性を検討・評価したり、分子力学法/分子動力学法による構造の動的解析もできます。

Concord(低分子化合物)

 SYBYL画面上の分子(2D構造)を簡単に3D構造に変換します。2D構造の立体表記を反映させた立体異性体も簡単に作成できます。

2. ドッキング計算とスコア評価
 活性部位にあるアミノ酸残基をそのまま利用して低分子をドッキングさせるのではなく、3種のプローブ原子で構成される"Protomol"を活性部位として見立て、それに低分子を重ね合わせる事でドッキングを行ないます。本手法で、計算時間の短縮化と精度向上を実現しました。また、 複合体を形成する際、金属原子や水分子を介した水素結合ネットワークを形成する系もあります。Surflex-Dockでは、特定の位置にある金属原子や水分子をタンパク質分子の一部としてProtomolを作成し、考慮することが可能です。

Surflex-Dock(ドッキング)

 活性部位にあるアミノ酸残基をそのまま利用して低分子をドッキングさせるのではなく、3種のプローブ原子で構成される"Protomol"を活性部位として見立て、それに低分子を重ね合わせる事でドッキングを行ないます。本手法で、計算時間の短縮化と精度向上を実現しました。また、 複合体を形成する際、金属原子や水分子を介した水素結合ネットワークを形成する系もあります。Surflex-Dockでは、特定の位置にある金属原子や水分子をタンパク質分子の一部としてProtomolを作成し、考慮することが可能です。  左図はStreptavidin-Biotin複合体のX線構造(PDB:1STP)を利用したRe-Docking結果です。水色がX線構造、紫色が計算結果(ドッキング構造)であり、X線構造を再現したモデルが得られていることがわかります。最近、多くの研究者によって、ドッキングツールを比較した解析がされていますが、その中でもSurflex-Dockは「精度の高いツール」として報告されています

Surflex-Dock、CScore (スコア評価)

 Surflex-Dockのスコア関数以外に、4種の異なるスコア関数を用意してます。この計5種類を利用したコンセンサス評価を実施してモデル選択が可能となります。

結果からさらに高度な処理へ

3. 化合物の構造最適化とモデル閲覧
 バーチャルスクリーニングの結果を基にアッセイ評価を実施して実際に活性のある化合物を手に入れたら、次に化合物の構造最適化を行ないます。このとき、計算化学的な構造展開だけではなく、結合様式や分子表面/特性の表示を利用した経験的・直感的な構造展開と組み合わせる事で、より有効な構造最適化が行なえます。

RACHEL (de novoデザイン/構造最適化)

 計算で得られた活性化合物(Coreフラグメント)の配向と活性部位の形状・特性を基にフラグメントベースで化合物を構築・評価して、より活性部位と相互作用可能な新しい化合物をデザインします。

MOLCAD (結合様式の確認)

 結合部位の形状や疎水・静電的といった分子特性の観点から、モデルを視覚的に観察して化合物デザインへの活用・評価に利用できます。

Benchware 3D Explorer(モデルの閲覧)

 計算で得られた結果はもちろんのこと、低分子/高分子の分子表面表示や結合部位/水素結合表示などの優れたViewer機能を備えています。Windows上で動作しますので、他分野の研究者と構造ベースでの情報共有を行なうなど様々な形で利用することができます。また、Webサーバーを介して、SYBYLモジュールと連結させることもできます。

Advance / Expertパッケージ

QSAR with CoMFA

ドッキング計算で得られたモデルを基に3D-QSARを実施します。活性の強弱に関与する領域を統計学的に推定できます。

EA-Inventor

 ユーザ所有/定義したスコア関数が利用可能なde novoデザイン用ツールです。

Advanced Protein Modeling

 研究対象としているタンパク質の立体構造が未知の場合に、その立体構造を予測・構築するためのホモロジーモデリング用ツールです。既存構造をファミリー化した独自の構造DBに対して、研究対象のアミノ酸配列の相同性検索を実施し、得られた相同性の高い立体構造を鋳型として、未知タンパク質の立体構造を予測・構築します。ここで構築したモデルを利用したドッキング計算も可能です。

UNITY

 低分子データベース検索システム。2D/3Dでの通常の検索以外に分子の柔軟性や生体高分子の活性部位の形状・特性を考慮した検索など幅広く利用できます。

Concord Standalone

 Concordのコマンドライン版。大量の3D構造を高速に作成できます。

StereoPlex

 構造のキラリティー原子の認識と可能な立体異性体の作成(2D)を自動で行います。Concordで3D化すれば、複数の立体異性体を作成できます。

Selector

 化合物の多様性や類似性を評価するユーティリティツールです。

Benchware Web-Dock(合成候補化合物のドッキング評価)

 合成研究者が思い描いた構造をドッキング計算させて、合成する化合物の取捨選択や優先順位付けを行うための合理的なドラッグデザイン支援ツールです。化合物の描画、ジョブの投入や結果出力はBW 3D Explorer、ドッキング計算はSurflex-Dockで実施します。また、分子設計担当者が予め作成・登録した計算条件を利用するようになっていますので、合成研究者は簡単操作で精密なドッキング計算が可能です。



※Kellenberger E, Rodrigo J, Muller P, Rognan D:  Comparative Evaluation of Eight Docking Tools for Docking and Virtual Screening Accuracy. Proteins, 2004, 57, 225-242.

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